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更新日:2018年9月13日

水産業活性化支援センター便り~Vol.26

ご挨拶

唐津市では平成24年度から九州大学と共同研究で「新水産資源創出研究プロジェクト」に取り組んでいます。
このプロジェクトでは水産業の活性化と地域の活性化を目指して、唐津市相賀にある水産業活性化支援センターでマサバなどの完全養殖技術の開発、ケンサキイカの先端的研究、バイオ水産技術の開発を実施しています。

前号では今年度の唐津Qサバ種苗生産の状況をお伝えしました。今年の春にふ化した唐津Qサバのこどもたちは、今は海のいけすの中でのびのびと育っています。
さて、実は当センターでは唐津Qサバの種苗生産技術の飛躍的な向上を図るために、種苗生産以外にもサバを使った高度な基礎科学に関する研究やバイオ技術に関する研究を行っていることをご存知でしょうか?
今回は、唐津Qサバの種苗生産技術開発以外のサバを使った研究の中から、基礎科学研究についてご紹介いたします。

マサバの基礎科学的研究

生殖内分泌機構の解明

完全養殖システムの高度化を目指して!!


完全養殖の実現のために最も重要なことは、親魚から計画的に受精卵を得るということです。そのためには、期間内に良い卵を持つメス親と、良い精子を持つオス親へと仕立てる技術や、計画的に産卵活動を促す技術が必要です。
つまり、卵や精子の発達と成熟を人為的にコントロールする技術が必要なのですが、実は多くの魚で完全養殖が実現できないのは、この部分が難しいからです。

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生殖腺(卵巣や精巣)の発達と成熟は、脳とその下に付属する脳下垂体から分泌される内分泌ホルモンによって調節されます。(右図)
まず、脳の視索前野という場所から生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)というホルモンが分泌されます。このホルモンの刺激によって脳下垂体から、ろ胞(卵胞)刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が分泌されます。これらのホルモンは血流にのって生殖腺へと運ばれ、卵胞や精子の発達を促します。

このような生殖を調節するホルモンの働きは、哺乳類ではよく研究されています。それは、医療や製薬のための基礎的な情報となるためです。しかし、魚でも同じような内分泌システムによって卵や精子の発達が促されているのか、わかっていないことがたくさんあります。
私たちのセンターではサバを使って、遺伝子実験や生化学的な手法により生殖を調節するホルモンの詳細な働きを調べています。

卵胞とは:卵巣にある、卵を含んだ球状の細胞の塊であり、排卵時にそこから卵が放出される。

サバを使って研究することの意義

有用魚種を増やせ!!

研究を効率的に進めるためには、扱いやすい動物種をモデルとする必要があります。例えば、医療のための研究であっても人を使って実験を行うことは多くの場合で不可能です。そのため、人のモデルとしてマウスやラットなどのネズミ類がよく使われます。
魚の場合、多くのケースでモデルとされるのはゼブラフィッシュという小さな熱帯魚やメダカなどです。これらの小型モデル魚は飼育が簡単であり世界中の研究者が取り扱っているため、実験を行う上でのさまざまなノウハウやツールなどが蓄積されています。研究を進めるための技術習得や知識を得るための魚としては最適でしょう。2

ところが魚類では、「種による違い」を無視することができません。簡単に言ってしまうと、魚種ごとの特性がバラバラであるため、単純に魚類として一括りにできないということです。
はっきりとわかってはいませんが、魚類はおよそ3万種程いるのではないかと言われています。さまざまな魚がいることは皆さんもイメージできるのではないでしょうか。例えば、海に住む魚と川や湖など淡水に住む魚、回遊する魚と砂や岩陰に潜む魚、メダカのような小さな魚とマグロのように何百キロにもなる魚、サケのように一回卵を産むと死んでしまう魚と一生の間に何回も産卵する魚、姿形もさまざまです。
つまり、小型モデル魚を使った研究で「AはBの働きを強める」という科学的知見が明らかになった時に、「じゃあ、魚ではみんなAがBの働きを強めるんだね」と思い込んでしまうことは大変危険です。調べたい魚種そのもの、あるいはできるだけ近い種(近縁種)をモデルとして研究をすることが重要なのです。

 

私たちのセンターでは、技術的に困難な完全養殖システムをサバで確立しました。完全養殖システムは、精密な飼育実験ができる上に実験目的に合わせて様々なサンプルを計画的に採取できる大変優れたツールです。

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サバはスズキ目という魚のグループに属します。実は、食卓に上る魚が最も多く含まれるのがこのグループです。例えば、養殖が盛んなマグロやタイ、ブリなどもスズキ目です。特に絶滅危惧種に指定されたクロマグロなどマグロ類は、サバと同じスズキ目サバ科に属する魚で、最も近い間柄であると考えて良いでしょう。私達がサバを使って明らかにする科学的知見はサバ養殖だけではなく、これら近縁種の養殖技術の向上にもきっと役立つでしょう。

 

獲る漁業は既に限界を超えたと言われており、これからは増やす漁業である魚類養殖の重要性が世界的に高まることは間違いありません。おいしい魚をいつまでも食べられるように、魚の生殖メカニズムを明らかにすると同時に、養殖システムの高度化を急がなければなりません。
養殖魚の研究モデルに最適な、サバの完全養殖システムというパワフルなツールを使って、ここ唐津から、世界に先がけた情報を、引き続き発信していきます。

 

問い合わせ

水産課 

〒847-8511 佐賀県唐津市西城内1番1号

電話番号:0955-72-9130