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更新日:2022年8月29日

市民厚生委員会行政視察報告書(令和4年度)

1参加委員

中村健一委員長、原雄一郎副委員長

井上裕文委員、伊藤泰彦委員、熊本大成委員、白水敬一委員

2視察日

令和4年7月25日(月曜日)、7月26日(火曜日)

3視察概要・所感

視察項目1:いこま空き家流通促進プラットホームについて(視察先:奈良県生駒市)

概要

生駒市は、奈良県の北西端に位置し、大阪府と京都府に接している。近年は、関西文化学術研究都市や生駒駅前再開発、そして「近鉄けいはんな線」の開通により大阪のベッドタウンとして、今後さらなる飛躍が期待されている。
人口および住宅状況は、昭和36年の生駒台のニュータウン開発を皮切りに住宅開発が進み、昭和45年市制施行時の人口37,000人であったものが、20年後には約3倍の100,000人を超え、本年4月現在で118,139人となっている。また、住宅の約7割が戸建て、そのうち約8割が持ち家となっており、現在、ニュータウンの高齢化が進み、今後、空き家が増加する可能性があることを把握し、空き家関連事業に注力することとなった。
そのような中、生駒市では平成28年度に空き家実態調査を行い、空き家1,444棟(空き家率2.8%)を把握した。また、調査時のアンケートでは「今後どのように活用していく予定か」や「困っていること」、さらには「求める支援」についても調査を行い、調査の結果から課題は事業者や活用者とのマッチングが不十分であることが分かった。そして、平成29年度に「空家等対策計画・空き家流通促進検討懇話会」を設置し、有識者や関係者による流通促進の方針を検討し、平成30年5月に関係7業種8団体と包括協定を締結し、全国初のオーダーメイド空き家対策を行う「いこま空き家流通促進プラットホーム」を設立。
プラットホームの基本方針は、1.「民間主導の自立運営組織を目指す。」、2.「当事業を通じて、地域に貢献する。」の2点を掲げている。また、利用条件は、1.「所有者が売りたい、貸したいと思っている。」、2.「不動産媒介契約を結んでいない。」の2点で利用しやすくなっている。
プラットホームでの役割分担について、市は活用意向などのヒアリングや民間事業者への情報提供の同意取得、事務局を担い、事業者は専門的な支援を行うこととしている。また、流通促進会議を月1回開催し、新規物件の情報や対応中物件の進捗確認などの情報共有を行っている。
令和4年6月末現在での利用実績は、取扱件数110件、成約件数53件(うち売却45件、賃貸8件)、業務実績78件(媒介契約、相続登記、耐震診断など)となっている。

所感

生駒市も空き家バンク制度を用いて事業を行っていたが、なかなか事業が軌道に乗らなかったことを受け、空き家実態調査を行い、状況把握に努めた。その際、単に空き家の状況を把握するだけではなく、所有者の今後の活用予定や困っていること、求める支援などについても調査を行い、課題やニーズを把握し、将来起こり得る問題を予測し、今後の対策に素早くつなげていたことは、素晴らしいことであった。また、調査結果をもとに、課題が事業者や活用者とのマッチングが不十分であった点を把握し、市は民間との協働を主眼とした事業展開を目指した施策立案を行い、事業を開始した。
設立に向けては、有識者や関係者で組織した懇話会を立ち上げ、検討がなされたこともあり、参画団体は「自立運営組織を目指し、地域に貢献する。」を基本方針に事業が行われている。その際、市はすべてを団体に任せるのではなく、後方支援(事務局、所有者の意向確認、広報など)を行い、所有者と事業者とのパイプ役となることで、信頼される事業となっていると感じた。
また、地域課題を解決するための活用方法を市と対応事業者が空き家所有者と協議し、民間の学童保育所として生まれ変わらせるなど、地域の実情を把握した、柔軟な対応、発想も素晴らしかった。
今回の視察で、現在への対策も重要であるが、生駒市のように将来を見据えた事業の展開、他事業・民間との連携による柔軟な対応は、今後の唐津市でも参考としていけるものであると感じた。

 

視察研修の様子(生駒市)
視察研修の様子

生駒市議会議場
生駒市議会議場

視察項目2:地域医療体制推進事業(移動診療車)について(視察先:奈良県宇陀市)

概要

宇陀市は、奈良県東部の高原地帯に位置し、面積が247.5平方キロメートルで、山林が約7割強を占め、宅地は4割弱で山間部にも集落が点在している。平成18年1月に3町1村が合併し、現在の宇陀市が誕生した。人口は、合併当初38,426人であったものが、令和4年4月現在で28,388人にまで減少し、高齢化率は42.7%で、今後75歳以上の後期高齢者の割合はさらに増加すると見込まれている。
こうした中、宇陀市での地域医療の課題「開業医の相次ぐ閉院により医療空白地ができてしまった。」「今後も開業医の高齢化、後継者不足により、同じような地域が増加すると考えられる。」「医療介護サービスを必要とする高齢者が増える一方、サービスを提供する医療従事者、介護従事者が減少しニーズに対応できなくなる。」などの要因から移動診療車(Uda Mobile Clinic:UMC)の導入に至った。
導入に至るまでの経緯は、平成30年に診療所3院が閉院したことを受け、翌平成31年に市立病院地域医療部と行政で検討会を発足させ、新たに診療所を建設するのか、移動診療車を導入するのか検討を進めてきた。そして、令和2年度に市内医療機関からの意見拝聴、宇陀地区医師会定例会に報告を行い、移動診療車導入案が決定され、令和4年5月から運用が開始された。
移動診療車のコンセプトは「移動可能な診療所」、ポリシーは「信用・信頼される診療」と明確にされており、市民に「あそこに行ったら市立病院や他の病院に搬送されるかもしれないけど、なんとかしてもらえる」と思ってもらえることが大切とのことであり、地域に定着させるための周知活動を行うとともに、自治会やまちづくり協議会、民生委員などと協議していくとのこと。
移動診療車の導入経費は、総額9,650万円(車体4,000万円、機材3,000万円、蓄電池300万円、消費税など)で、財源は合併特例債を活用したとのこと。また、維持管理経費は、令和4年度で年間1,370万円(人件費750万円、委託料450万円、通信費80万円、燃料費20万円、備品費70万円)、令和5年度以降は年間1,450万円(人件費750万円、委託料450万円、通信費80万円、燃料費20万円、保守点検150万円)を見込んでいるとのことであった。
今後の診療日については、乗車できる医師の数で決定されていることもあり、医師と協議しながら増やしていくとのことであった。

所感

宇陀市は、複数の医療空白地への対応ができる機動力や災害時の活用、土地、建物を必要としない経済性などを理由に特殊車両を用いた移動診療車を採用していた。また、移動診療車のコンセプト「移動可能な診療所」、ポリシー「信用・信頼される医療」は、市立病院の医師が考えたものであり、目指すビジョンが明確となっていることはいいことだと感じた。
今後、唐津市においても同様の地域医療の問題が起こりうる可能性があり、そうなった場合を想定した対応策を検討していく必要がある。唐津市七山において、公共施設の一部を改修して地域医療を確保した例はあるものの、地域によってはできないところもある。そうした中で、その地域に限定した事業ではなく、唐津市の将来を見据えた検証を行って行くべきであると感じた。
また、今回の視察で移動車とオンライン診療をうまく組み合わせることで新たな診療体制の構築が可能ではないかとも考えられた。例えば、宇陀市のような移動診療車の設備は備えなくとも、オンラインによる医師の診療を看護師が手伝えるだけの設備で診療が可能であれば、へき地における診療体制の可能性が広がるのではないかということである。しかし、このような医療を提供するためには、財源および医療スタッフの確保が必要不可欠である。
今後、唐津市にあった地域医療体制の検討を進めて行く必要があると感じた。

 

視察研修の様子(宇陀市)
視察研修の様子

宇陀市議会議場
宇陀市議会議場

移動診療車(外見)

移動診療車

(外見)

移動診療車(内部)

移動診療車

(内部)

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