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玄海原子力発電所対策特別委員会行政視察報告書(令和7年11月18日~19日)
1 参加委員
- 伊藤泰彦委員長
- 大西康之委員
- 高倉寛和委員
- 甲斐田晴子委員
- 片峰和也委員
- 大河内正弘委員
- 中山亘員
- 古田リバー委員
- 筒井紀充委員
- 吉村慎一郎委員
- 古藤宏治委員
- 青木茂委員
- 伊藤一之委員
2 視察日
令和7年11月18日(火曜日)、11月19日(水曜日)
3 視察概要・所感
視察項目1:原子力災害対策について(愛媛県八幡浜市)
概要
八幡浜市は愛媛県の西端にある佐田岬半島の付け根に位置する人口約2万9千人の都市である。隣接する西宇和郡伊方町に立地する四国電力株式会社伊方発電所からは、全市域が半径20キロメートル圏内に位置している。
愛媛県では、原子力災害時における伊方町住民の避難に必要な避難道路の被災状況を確認するため、令和2年度よりドローンを導入し、JAXA(ジャクサ)等と共同で毎年実証実験などが行われている。ドローンを利用して得られた情報は、八幡浜市等の隣接自治体に対し、NISS(ニース、統合原子力防災ネットワーク)等を通じて提供されることが想定されている。
高知県を起点とし、愛媛県南予地方の主要都市を経由し大分県に至る国道197号のうち、八幡浜市と大洲市の間約14キロメートルを高規格道路「大洲・八幡浜自動車道」として愛媛県が整備を進めている。この道路は、災害時における広域避難・救援道路の軸となる「命の道」と位置付けられていて、これまでに6.1キロメートルが開通し、現在残り7.5キロメートルの開通に向け事業進捗が図られている。
全面開通に向けては、大洲市、八幡浜市及び伊方町で組織される国道197号(大洲・八幡浜・西宇和間)高規格道路建設促進期成同盟会において、国等に対し毎年5回の要望活動が行われている。
八幡浜市では、令和3年3月に「八幡浜市備蓄計画」を策定し、災害時に備えて蓄えておく物資の種類や数量を定めている。災害発生後3日目以降は救援物資等が到着するとの予想のもと、災害発生後2日分を備蓄することとし、平成25年に公表された愛媛県地震被害想定調査結果をもとに人口減少率を乗じて備蓄物資支給対象者を算出していて、令和7年9月30日現在の人口で算出すると約1万6千人となる。
物資の種類は、アルファ米や缶詰などの食料、水、簡易トイレ、ポータブル電源、生理用品などで、令和3年度から10年計画で整備が進められている。また、市内65か所にはプレハブ型防災倉庫が設置されていて、投光器や発電機など、有事に備えた資機材が保管されている。
八幡浜市は、唐津市と同じく有人離島(大島)を有していて、島内には3か所の指定避難所がある。そのうち大島産業振興センター(旧大島小中学校)は、平成25年から放射線防護施設としても稼働していて、建物3階の一部と4階部分が陽圧化されるとともに、原子力災害用として島民一人あたり4日から5日分の食料と各種物資が備蓄されている。また、島の東側沿岸部のほとんどが津波浸水想定区域となっていることから、大島産業振興センターは津波避難ビルとしての役割も担っている。
所感
急しゅんな山々が連なり、平地が少なく、北側と西側が海に面する八幡浜市の地形的特性上、住民が緊急かつ確実に避難するうえで高規格道路の整備は必須であり、その点で関係自治体が連携し要望活動等を行い、事業進捗を着実に図られていることは特筆すべきことである。
愛媛県が主導するドローンを活用した取り組みについては、JAXA(ジャクサ)との共同、NTTデータとの連携により実施されていて、また、毎年内容が異なる実証実験などを行われていることからも先進的なものであり、今後、情報提供をはじめとした近隣自治体との連携に期待がもたれる。
災害用資機材を保管するプレハブ型防災倉庫の設置場所は、市主導ではなく、市内の自主防災組織と協議のうえ決定されていて、各自主防災組織が所有する資機材等も保管できるようになっている。
このような弾力的な運用を行うことは、防災意識の高まりにも寄与するものであり、大変参考となる取り組みである。
有人離島を有する唐津市にとって、災害時の離島住民の安全な避難は大変重要な課題である。八幡浜市同様、放射線防護施設を備える離島もあり、その運用等については、県との連携をより一層深め、今後さらに確実で実効性のあるものにしていかなければならない。

視察の様子
八幡浜市議会議場
視察項目2:四国電力株式会社伊方発電所について(愛媛県西宇和郡伊方町)
概要
伊方発電所は、愛媛県西宇和郡伊方町に立地し、86万平方メートルの敷地の中に1号機から3号機まであり、1号機および2号機は、平成28年5月と平成30年5月にそれぞれ運転を終了し、現在、約40年をかけた廃止措置作業を進められている。
3号機は平成6年12月に運転を開始。福島第一原発事故後、約5年5か月の停止期間を経て、新規制基準適合後の平成28年8月に再稼働し現在に至っている。
伊方発電所は、海抜10メートルの位置に立地していて、厳しい条件下で想定される最大の津波高さは8.1メートルであるため、津波の影響はないとされているが、万一に備え、建物入口扉を水密扉へ取り替えるなどの対策が行われている。
原子炉や使用済燃料を冷却するための対策として、電源の確保及び安定的に冷却する手段の多重化・多様化ため、新規制基準に定められた対策のほか、伊方発電所独自の対策も図られていて、電源面においては、これまであった送電線に加え、発電所外部から電気を供給するために海抜95メートルの変電所から配電線を敷設し、また、冷却面においては、海から水をくみ上げる海水ポンプが使用不能となった場合に備えた電動ポンプ30台の配備、原子炉を冷やすために蒸気発生器へ注水する既設の補助給水ポンプが使用不能となった場合に備えた注水ポンプの追加設置などが挙げられる。
伊方発電所では、1号機に貯蔵している使用済燃料を3号機に輸送することにより、3号機の使用済燃料プールの貯蔵余裕が減少するため、再処理工場に搬出するまでの間、一時的に貯蔵する施設として乾式貯蔵施設の設置が計画され、令和3年11月に設置工事を開始、令和7年7月から運用が開始されている。
この施設は、乾式キャスクと呼ばれる金属製の頑丈な容器に水で十分に冷却された使用済燃料を収納・密閉し貯蔵する施設で、水や電気を使用せず、空気の自然対流で冷却を行う施設である。
乾式キャスクは、使用済燃料を安全に貯蔵するための機能として、「閉じ込め」「臨界防止」「遮へい」「徐熱」の4つを備えていて、伊方発電所で使用する乾式キャスクは、貯蔵後に使用済燃料を輸送専用の容器に詰め替えることなく再処理工場へ搬出することができる輸送・貯蔵兼用となっている。また、乾式キャスクは施設の床に固定されていて、おおむね1,000ガルの揺れに対しても耐震性が確保されることが確認されている。
所感
平成23年の福島第一原発事故以降、全国の原子力発電所ではさまざまな安全確保に向けた取り組みが講じられているが、伊方発電所においても同様であった。地震や津波などの自然災害を強く意識した設備や、自主的な対策も含めた多重・多様な安全対策が施されていて、単一の対策に依存しない姿勢が印象に残った。
今回、実際に乾式貯蔵施設内に入り視察を行ったが、乾式貯蔵施設については、現在、玄海原子力発電所においても設置作業が進められていて、今後の進捗状況を注視していく立場として、乾式貯蔵施設の構造や仕組み、役割等はもとより、施設内へ進入するまでの厳しいセキュリティ対策についても直接目の当たりにすることができ、大変貴重な機会となった。
伊方発電所では、情報公開の徹底を図られるとともに、訪問対話活動などを精力的に実施されている。原子力発電所が地域社会の中に存在する以上、安全対策は、技術的な適合性だけでなく、万一に対する備えや、地域社会との信頼関係構築も含めた継続的な努力が不可欠であることも改めて認識することができた。
今回の視察は、原子力発電が技術・人・地域の信頼によって成り立つ社会インフラであることを再確認する機会となった。

視察の様子










