本文
産業経済委員会行政視察報告書(令和8年度)
1 参加委員
- 山下壽次委員長
- 久保美樹副委員長
- 野田宗作委員
- 甲斐田晴子委員
- 中山亘委員
- 水竹道夫委員
- 伊藤一之委員
2 視察日
令和8年5月18日(月曜日)、令和8年5月19日(火曜日)
3 視察概要・所感
視察項目1:鎌倉市の観光施策について(視察先:神奈川県鎌倉市)
概要
鎌倉市は、人口約17万人、面積39.66平方キロメートルの都市でありながら、年間約1,620万人の観光客が訪れる全国有数の観光都市である。
東京都心や横浜方面からのアクセスに優れ、鶴岡八幡宮、鎌倉大仏、長谷寺、小町通り、江ノ島電鉄沿線などの歴史・文化資源、海岸やハイキングコースなどの自然資源を有している。
一方で、観光客の多くが日帰りで、観光客数の多さが市税収入や地域消費の増加に直結しにくいこと、また限られた観光エリアに来訪者が集中することが大きな課題となっていた。
特に、鎌倉高校前駅周辺では、アニメ作品の影響等により写真撮影目的の観光客が集中し、車道での撮影、歩道の滞留、私有地への立入り、ごみの放置など、市民生活や安全確保に影響する事案が発生している。
これに対し、鎌倉市では多言語によるマナー啓発、交通誘導員の配置、青色回転灯付パトロールカーの巡回、防犯カメラの設置、職員による人流誘導の実証実験など、現場の状況に応じたきめ細かな対策を進めていた。
また、混雑予測マップや徒歩観光促進マップ、パークアンドライド、公共交通利用促進、江ノ電沿線住民への優先入場社会実験などにより、混雑の見える化と観光客の分散化を図っていた。
日本遺産「いざ、鎌倉」を活用し、主要観光地だけでなく周辺地域へ回遊を促す取組も行われており、観光振興を単なる誘客ではなく、市民生活と観光の調和を図る政策として進めている点が特徴的であった。
所感
鎌倉市の視察を通じ、観光振興においては「観光客を増やす」ことだけでなく、住民の暮らしを守りながら観光の質を高める視点が極めて重要であると感じた。
観光客が増加すれば地域のにぎわいは生まれるが、交通渋滞、歩行環境の悪化、マナー問題、防災・安全面の負担なども増大する。鎌倉市が、地域住民や交通事業者、関係部署と連携しながら、現場ごとの課題に対応している姿勢は大変参考になった。
唐津市においても、唐津城、虹の松原、呼子まちなみ、名護屋城跡、唐津くんち、唐津焼、海、食など多様な観光資源を有している。朝の唐津湾の風景や雨の日ならではの景観など、既にある魅力を切り口を変えて発信するだけでも、滞在時間の延長や再訪意欲の向上につなげられる可能性がある。
一方で、今後インバウンドや大型イベント時の来訪者が増える中で、地域住民との調和を前提とした観光施策が必要である。特に、混雑の見える化、回遊導線づくり、マナー啓発、交通対策、トイレやごみなど受入環境の整備は、早い段階から検討すべき課題である。
また、鎌倉市が文化財や日本遺産を単なるブランドとしてではなく、観光客を分散させるためのストーリーとして活用していた点も印象的であった。唐津市でも、点在する歴史・文化・自然資源を一つの物語として結び、滞在時間の延長や消費額向上につなげる必要がある。
観光は交流人口の拡大だけでなく、まちの価値を高め、市民が誇りを持てる地域づくりにつながるものであり、持続可能な観光地域づくりを進める上で参考とすべき点が多い視察であった。

視察研修を受ける様子

鎌倉市議会議場
視察項目2:横須賀市の観光施策について(視察先:神奈川県横須賀市)
概要
横須賀市は、三浦半島の中心に位置し、古くから軍港のまちとして発展してきた都市である。
製造業の衰退や人口減少、社会減といった課題を背景に、観光を新たな産業の柱として位置づけ、平成26年に観光立市推進条例を制定し、観光立市推進基本計画及びアクションプランに基づく戦略的な観光振興を進めていた。
これまでの横須賀観光は、軍港・基地関連の観光が中心で、来訪者層が中高年男性に偏り、日帰り型で宿泊率が低いことが課題であった。
そこで、海や緑、近代化遺産、異国情緒ある文化、食などの既存資源に、音楽、スポーツ、エンターテインメント、サブカルチャーを掛け合わせ、若年層や女性層、ファミリー層など、これまで横須賀を訪れていなかった層への訴求を進めていた。
主な取組としては、市内に点在する歴史・文化・自然・観光施設をサテライトとし、ルートで結ぶ「よこすかルートミュージアム」、長井海の手公園ソレイユの丘やよこすかポートマーケットのリニューアル、東京九州フェリーの就航、オクトーバーフェストや音楽イベントの誘致、ウインドサーフィン、BMX、eスポーツ、メタバース、アニメ・ゲームとの連携などが挙げられる。
また、猿島では旧軍施設跡を生かし、ガイドツアーやSNS映えする資源として磨き上げることで、新たな来訪動機を創出していた。これらの結果、観光客数は目標の年間1,000万人を達成し、若年層や女性層の割合も増加している。
市民アンケートや事業者アンケートにおいても、観光施策による好意的な影響が確認されており、観光を地域経済や市民福祉につなげようとする姿勢が明確であった。
一方で、宿泊客数や観光消費額の伸び、平日誘客、二次交通、インバウンド対応、高付加価値コンテンツの造成などが今後の課題として整理されていた。
所感
横須賀市の視察では、「観光を産業として育てる」という明確な目的意識と、データ分析に基づく戦略性、さらに民間活力を生かした事業展開が特に印象に残った。
行政がすべてを担うのではなく、方向性やKPI(重要業績評価指数)を示し、民間事業者が創意工夫を発揮できる環境を整えることで、施設整備やイベント、コンテンツ開発を柔軟に進めている点は大変参考となった。
特に、指定管理者制度や民官連携を活用し、民間が稼げる仕組みづくりを行政の役割として明確にしている姿勢は、唐津市においても学ぶべき点が多い。特に、観光施設の整備や運営について、民間管理事業者の選定方法や裁量の持たせ方を工夫することは、既存施設の魅力向上や新たな投資を呼び込む上でも重要である。
また、横須賀市は従来の「軍港のまち」というイメージにとどまらず、音楽、スポーツ、eスポーツ、アニメ、メタバースなどを取り入れ、新たな客層を獲得していた。
既存の地域資源であっても、見せ方や組み合わせ、発信方法を変えることで、若者や女性、将来のリピーター層に訴求できることを実感した。唐津市においても、地域資源を、点ではなく線や面で結び、市全体を体験型観光エリアとして再構築することが重要である。
一方で、横須賀市でも観光客数の増加を宿泊や消費にどうつなげるかが課題とされており、この点は唐津市とも共通している。観光客数だけでなく、滞在時間、消費額、満足度、再来訪意向を重視し、地域経済や市民福祉の向上に結び付ける視点が必要である。
今回の視察を通じ、唐津市においても、データに基づく施策立案、民間事業者との連携強化、地域資源の磨き上げ、高付加価値型・滞在型観光への転換を進め、「選ばれるまち、また訪れたくなるまち」を目指す必要性を強く感じた。

視察研修を受ける様子

横須賀市議会議場










