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市民厚生委員会行政視察報告書(令和7年度)

ページID:0036649 更新日:2025年7月25日更新 印刷ページ表示

1 参加委員

  • 古藤宏治委員長
  • 黒木初副委員長
  • 江里孝男委員
  • 井手清和委員
  • 片峰和也委員
  • 大河内正弘委員
  • 伊藤泰彦委員

2 視察日

令和7年7月2日(水曜日)、令和7年7月3日(木曜日)

3 視察概要・所感

視察項目1:妊婦健診の助成拡充について(視察先:大阪府枚方市)

概要

枚方市は、大阪府の北河内地域に位置し、人口約39万の中核市である。製造業が主軸であるが、医療・福祉分野の比重も高く、また大学が5つ立地し「学園都市」として発展している。

本視察項目は妊婦健診の助成拡充について、令和6年度までは健診1回あたりの助成額5,040円・助成回数上限14回だったものを、上限助成回数17回に拡充する内容である。

拡充に至った経緯は、令和5年の厚生労働省の通知において予定日(40週)を超過した妊婦にも支援を行うように求められていたこと、令和6年度における枚方市の妊婦健診助成総額が大阪府下の平均を下回っていたこと、すでに15回以上の助成を実施しているのが府内に3市あり、また令和7年度に助成増額を予定または検討している市町村が18市町あったことなどから助成拡充の検討がなされた。

制度設計においては、すでに助成拡充に取り組まれていた高槻市の事例を参考としつつ、枚方市の過去3年分の予定日超過40、41、42週毎の実績から見込み件数を算出。そして、各週数に応じた公費負担回数を基本的な妊婦健診内容に対する費用である健診1回5,040円を助成する内容にて設計がなされた。令和7年度の拡充分予算は、約400万円で市独自財源であった。​

所感

妊婦の経済的負担軽減ならびに健診の継続性確保は、出産・育児支援の基礎であり、妊婦健診の助成拡充は安心して出産を迎えられる体制整備の一つとして有用な事業と考えられる。

枚方市の場合、健康管理システムのデータにおいて、過去10年の出産予定日超過はいずれの年も約20%発生しており、助成拡充による一定の効果が期待できる。

しかしながら、予定日を超過するほど医療保険により処置される可能性も高まるが、実態把握が困難な点は課題と言える。また、妊婦健診は保険診療外であるため、健診にかかる費用は医療機関や助産所などの機関間で異なるため、助成の増額に便乗した請求額の増加が発生しないよう適切な制度活用の注視が必要である。

本市においても、妊婦健診の助成拡充の事業は妊婦を手厚くサポートすることができ、安心して子どもを産み育てられるまちづくりに繋がる重要な施策 の一つとして参考となった。

枚方市での視察研修の様子
​枚方市での視察研修の様子​

枚方市議会議場
​枚方市議会議場​

視察項目2:0歳児見守り訪問「おむつ定期便」について、第2子以降の保育料無料について​(視察先:兵庫県明石市​

概要

明石市は、神戸市と加古川市の間に位置する約30万人の中核市である。瀬戸内海に面しており「海峡のまち」として、漁業なども盛んな地域である。明石市では、泉前市長時代に子どもの支援において5つの無償化を掲げ、現在も継続して取り組まれている。

5つの無償化の内容

  1. 0歳児見守り訪問「おむつ定期便」が無料
  2. 第2子以降の保育料が無料
  3. 高校を卒業するまでこども医療費が無料
  4. 学校の給食費が無料
  5. 公共施設の入場料が無料

本視察では、1および2の無償化の内容について説明を受けた。

まず、0歳児見守り訪問「おむつ定期便」については、生後3か月から満1歳の誕生月まで月1回、紙おむつや粉ミルクなどカタログから選択した3,000円相当分が無償で自宅に届けられ、併せて月齢に合わせた子育て情報紙も配付されている。

事業開始に至った経緯として、子育てモニターからの「育児が大変な0歳児の間も行政に関わって欲しい」などの声や、0歳児における育児不安、子育ての孤立化、0歳児への虐待の懸念などの観点から、母子を見守ることを目的として取り組みが始まった。

制度設計においては、滋賀県東近江市が先に取り組まれていたことから参考とされ、プロポーザルによる業者選定で生活協同組合コープこうべの委託事業となっている。物品については単価契約、見守り業務は総価契約となっており、物品を届ける見守り支援員には子育て経験のある女性を条件に採用され、保健師や助産師などの資格保有の場合は優先採用し、市と委託先にて研修も実施されている。配達は月最大2,400人に対し9人の見守り支援員で実施されており、令和5年度の予算額は約1億2千万円であった。

見守りの方法については、配達時に保護者等に声かけを行い、赤ちゃんとも対面するなど母子の様子を確認し相談などに応じられている。毎月の定期訪問を行うことで、母子の変化に気付けるように注視されている。

市は委託事業者からの報告書により、すべての見守り状況を確認し、報告の中で気になる家庭については、見守りの注視の依頼や市の関係部署と連携し家庭の状況確認が行われている。また、見守り支援員が緊急で対応が必要と判断した場合には、当日中に市に連絡をもらい状況に応じて市の関係部署から電話連絡や家庭訪問等の対応が行われている。

次に、第2子以降の保育料無償化については、国や県と異なり第1子の年齢制限や保護者の所得制限がなく、第2子以降における児童の認可保育所や幼稚園の保育料を無料にした事業である。また、明石市に居住することで適用可能で、DVなどの理由で住民票を移さずとも市内居住であれば利用できる。

すべての子ども達を全力応援という泉前市長のリーダーシップで事業がスタートし、現在も継続中の事業である。

令和5年度の予算額は約6億4千万円であり、子育て世帯の経済的負担の軽減という点で大きな役割を担っていると言える。​

所感

0歳児見守り訪問「おむつ定期便」については、令和5年度の申請率は99.6%であり、未申請者には勧奨文書の送付や家庭訪問などを実施されるなどの対策もあり、ほとんど申請漏れがない事業となっている。また、令和2~6年度の保護者と見守り支援員の対面率は83.7%、赤ちゃんとの対面率は59.6%であり、主目的である見守り支援には対面率の向上が大きな課題であるが、対策として土曜日配送や配送センターでの受け取りなどを検討されていた。

支援の主目的を物品支給ではなく、見守り・相談支援を主体としており、育児不安や孤立化、虐待リスクが高い時期を行政がサポートするこの事業は、子育て世帯の経済的負担だけでなく精神面でも大きな支えとなる事業と言える。

本市においても、取り組む価値のある事業と考えられるが、明石市のプロポーザル応募は2社であり、明石市よりも人口が少なく面積が広大な本市においては、事業者の確保が事業実施の大きな課題と考えられる。また、事業者おいても見守り支援員の確保やスキルアップなどの課題が想定される。

第2子以降の保育料無償化については、明石市の5つの無償化の項目の中でも大変有用な施策であるが、財政負担が大きな事業である。また、明石市においては、5つの無償化の施策の効果と推測されるが、入所児童数が2016年には5,081人であったのに対し、2025年には9,603人まで急激に増加し、人口増加という大きな効果を生んでいる。しかしながら、その一方で待機児童増加の問題が発生し、その対応に苦慮されている一面もあった。

また、これらの支援策は明石市独自の支援策であり、市独自財源を充てられている。子育て支援の5つの無償化により転入した世帯も多いことから、簡単に事業廃止を行うことは難しく、今後の財源確保が大きな課題と想定される。

本市においても第2子無償化は子育て支援策として有用な事業と考えられるが、明石市のような大阪や神戸といった都心部とのアクセスが良好な環境と比較すると、事業実施により大幅な人口増加などの効果を得ることは難しいと思われる。

子育て支援事業は将来を見据えた重要な施策ではあるが、財源の確保や長期運用による期待効果などを十分に検証したうえでの事業設計が必要と考える。​

明石市視察研修の様子
​明石市での視察研修の様子

明石市議会議場
明石市議会議場​


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