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更新日:2023年6月26日

産業経済委員会行政視察報告書(令和5年度)

1参加委員

  • 原雄一郎委員長
  • 中川幸次副委員長
  • 久保美樹委員
  • 山下壽次委員
  • 黒木初委員
  • 進藤健介委員

2察日

令和5年5月8日(月曜日)、5月9日(火曜日)

3視察概要・所感

視察項目1:若者回復率について(視察先:兵庫県豊岡市)

概要

豊岡市は、兵庫県の北東部に位置し、平成17年4月1日に1市5町(豊岡市、城崎町、竹野町、日高町、出石町、但東町)が合併してできたまちで、市域の約8割を森林が占め、北は日本海、東は京都府に接し、中央部には母なる川「円山川」が悠々と流れるなど、多彩な四季を織りなす自然環境に恵まれたところである。

豊岡市の「豊岡市地方創生総合戦略」で地方創生は、人口減少の緩和と緩和策を通じた地域活力の維持を目的とされ、大都市に暮らす価値に対抗しうる、突き抜けた「豊岡に暮らす価値と魅力」を創りあげるとされている。

そこで着目されたのが、「若者回復率」という独自で計算されている指標であり、今回の視察項目の一つである。この「若者回復率」とは、10歳代の転出超過数に対して20歳代の転入超過数が占める割合のことで、その指標をもとに人口減少の要因を分析し、さまざまな施策の展開が行われている。また、「若者回復率」は、国勢調査結果をもとに計算されており、その都度結果を分析し、戦略の効果や明確となった課題の整理を行い、今後取り組む対策などに活用されていた。

そうした中、豊岡市では人口減少の要因を「転出超過」「男女の未婚率の上昇」であることを把握し、人口減少抑制対策の柱として「定住する若者を増やすこと」「結婚する若者を増やすこと」を掲げ、総合戦略の上位目的「豊岡に暮らす価値を認め、豊岡で暮らすことに自信と誇りを持って住む人が増えている」を設定し取り組みを進めてきた。そして、2018年度からは、女性の若者回復率が特に低いことに着目し、女性にとって「豊岡で暮らす価値」の創造を意識し、第2期地方創生総合戦略では「ジェンダーギャップの解消」を最重要課題の一つとして明確に位置づけられていた。また、新たな視点として「多様性を受け入れるまちづくり(女性に選ばれるまち、外国人市民との共生推進)」、「深さをもった演劇のまちづくり」、「芸術文化観光専門職大学との連携」を追加するなど、現状把握と将来の展望を明確にされていた。

なお、豊岡市は、若者回復率を現在(2020年国勢調査結果)の35%を2025年までに50%にするという高い目標を掲げ、現在事業を行っているとの事であった。

所感

豊岡市は、データの収集と分析、またその結果をいかした施策展開が行われているので結果が表れていると感じた。通常、人口減少対策といえば、必要以上にさまざまな事業展開をしてしまい、結果として何が重要なものなのかが不明瞭となりがちであるが、豊岡市は外部アドバイザーからの助言とはいえ、「若者回復率」を柱とした点については参考にできるものであった。また、その中身を自然増減と社会増減にしっかり分けて展開している点も参考にするべきと感じた。唐津市もデータの収集と分析は行っているが、ある課題に対する活用のみとなっているように感じるため、市全体で分析結果を共有し、共有の数値などを活用した事業が必要であると感じた。

さらに、人口減少抑制対策として「定住する若者、とりわけ若い女性、結婚する若者」を増やすことを柱として、そのターゲットである移住してきてほしい若者に対してのメッセージや将来ビジョンを言語化し共有することで、関係者で事業ベクトルを揃えていることがすばらしく、唐津市でもぜひ取り入れたい手法であると感じた。

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視察研修を受ける様子

 

視察項目2:観光施策について(視察先:兵庫県豊岡市)

概要

豊岡市の産業は、農林水産業、観光業などが盛んで、特に観光業では全国的に有名な「城崎温泉」をはじめ、西日本屈指の神鍋スキー場、但馬の小京都・出石城下町、国の天然記念物で2010年にユネスコ世界ジオパークに認定された玄武洞などを有し、多くの観光客が訪れている。また、地場産業としては、全国の4大産地の一つである「かばん」や「出石焼」などの生産が行われている。

このように、さまざまな観光資源を有する豊岡市の観光戦略としては、まず観光客を徹底的に「城崎温泉」がある城崎エリアに集め、その観光客を周遊させる仕組みを軸として進められていた。その中心となっているのが、一般社団法人豊岡観光イノベーションで、2016年6月に豊岡市、但馬銀行、但馬信用金庫、全但バス株式会社、WILLER株式会社により、観光による地域経済の活性化を進めるために設立された観光推進の専門機関で、専門知識やノウハウを持つスタッフが、官民のネットワークを使いながら「ローカル」の磨きあげと、観光地マーケティングにより世界から選ばれるディスティネーションを目指していた。また、観光まちづくりの観点から、地域の関係者の力を結集し、顧客視点に立ち、地域の魅力を再編集して、地域の稼ぐ力を引き出し、地域経済の活性化に寄与することを目的として、主に「マーケティング事業」、「インバウンド向け宿泊予約事業」などの事業を行われている。

情報発信では、観光戦略の中心であり、古い和風の温泉街の良さが人気の「城崎温泉」の価値に共感できる観光客を内外から集めるための「外国語版宿泊予約サイト(Visit Kinosaki)」の作成と、海外レップを設置し、月1回リリース記事を作成し情報発信が行われており、訪日外国人観光客へ積極的なアプローチが行われていた。

観光DXとして、観光(客)に関するさまざまなデータ(宿泊者数、消費額、予約時期)を調査し、ビッグデータとして築盛し、そのデータを関係機関で共有されていた。また、エリア内のPMSを統一し、CRMステムの導入など関係者がニーズを正確に把握、分析することで旅行者の満足度の向上はもちろん、季節による閑散期の解消や客単価のアップにつなげることを目指されていた。さらに、データ収集方法については、観光客向けの直接アンケート、観光関連業者へのヒアリング、そしてGPS調査などのデジタル調査を組み合わせて行われていた。また、周遊を促進し観光消費額UPとユーザーデータを取得してマーケティングに活用できる地域アプリを開発されるなど、新しい取り組みが行われていた。

所感

豊岡市では、必要なデータの収集・分析・選別を行い、データをもとに施策を展開できることは有益であると感じた。また、分析により観光動向の情勢可視化が可能となり、脆弱な部分を戦略的に支援するような施策展開、さらには月別の宿泊者数を可視化することで閑散期を的確に把握し、集客につながるイベントの開催(豊岡演劇祭)などの事業が実施されていた。

唐津市においても、地域の観光情報の収集・分析の体制を強化し、データに基づいた観光戦略の策定が観光力の強化につながると感じた。

また、すべての項目においてマーケティングや戦略の組み立てができていて、かつそれらを言語化し関係者で共有されていることがすばらしいと感じた。また、多くのアドバイザーからの助言や民間事業者との連携が取れていることが、民間レベルのマーケティング手法が実施できていると感じた。

このように、民間からスペシャリストを招いたり、民間企業を加えた官民一体となった専門機関を設立することも考えていくことも必要で、観光からつとしてもスピーディーな対応を求めたいと思った。

唐津市の観光戦略も同じ施策の繰り返しではなく、あと一歩も二歩も進んで行く必要性があると感じた。

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視察研修を受ける様子 豊岡市議会議場

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議会事務局 

〒847-8511 佐賀県唐津市西城内1番1号

電話番号:0955-72-9162