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更新日:2023年8月7日

都市整備委員会行政視察報告書(令和5年度)

1参加委員

中村健一委員長、楢﨑三千夫副委員長、水上勝義委員、浦田関夫委員、宮原辰海委員、石﨑俊治委員

2察日

令和5年7月11日(火曜日)、7月12日(水曜日)

3視察概要・所感

視察項目1:公園整備事業について(視察先:大阪府堺市)

概要

堺市は大阪府の中南部に位置し、大阪府で人口および面積が第2の政令指定都市である。仁徳天皇陵古墳をはじめ、百舌鳥古墳が築造され、中世には海外貿易の拠点として自由都市を形成するなど、日本の経済・文化の中心の都市である。

視察地の大蓮公園は、堺市南区にある泉北ニュータウン内にあり、面積15.46ヘクタールの風致公園である。泉北ニュータウンは昭和40年頃に建設され、計画人口18万人から現在では人口11万人まで減少し高齢化が進んでいる。また、住宅戸数の半数が公的賃貸住宅であり、住宅の老朽化も課題となっている。
堺市は泉北ニュータウンにおいて、将来にわたり多様な世代が快適に住み続けることができるまちをコンセプトに「公的賃貸住宅の再生」「公的施設の活用」「住民による自主事業」に取り組んでおり、大蓮公園のPark-PFI事業もその一環である。

大蓮公園のPark-PFI事業の始まりは、公園内にあった旧泉北すえむら資料館の利活用であった。資料館にはニュータウン建設時に出土した文化財を展示していたが、老朽化し閉館していた。資料館の用途変更などでの利活用では収益性は低いと考えられ、公園全体として収益化を図るため関西初のPark-PFIに取り組まれた。Park-PFIの事業者は、このエリアに鉄道路線を有する南海グループであり、鉄道沿線の活性化を目的としていた。南海グループの提案が堺市のニーズと合致しPark-PFIが実現した。整備内容は、旧泉北すえむら資料館をリノベーションしカフェ併設の私設図書館を開設、キャンプ場・自転車オフロードコースの開設、マルシェなどのイベントスペース、公園駐車場の整備であり、このうち市負担の整備は公園駐車場のみである。私設図書館内には住民が利用できる私設棚が設置され本の閲覧が可能であり、カフェ以外にもキャンプメーカーによるキャンプ道具の展示・貸出・販売もあった。また、自転車オフロードコースは地元企業であるシマノ(自転車メーカー)の社員を中心としたボランティア団体により開設および維持管理されている。公園運用の改善などを検討するため、南海グループが事務局となり市民も参加する公園運営方針検討委員会が定期開催され、民間企業だけでなく住民との協働により運用されている。

所感

 

泉が丘駅から徒歩圏内に位置した都市公園であり、木々などの自然に囲まれ、リノベーションされた資料館内にある私設図書館やカフェはゆったりとした時間を過ごせる空間と、キャンプやバーベキュー、自転車コースなどアクティブな遊びができる空間が複合し、質の高い公園サービスが提供されていた。

また、Park-PFIのサウンディング結果をもとに駐車場整備が行われ、遠方からの利用促進も図られており、企業や市民のニーズに答えた事業が実施されていた。運用面においては、市民が参加できる図書館の私設棚やマルシェイベントなど地域と連携した取り組みが行われ、地域活性化につながっている。

公園運営で得られた収益は、公園および資料館の運営・環境改善・修繕費として活用されており、ランニングコストの低減も図られていた。

唐津市においてPark-PFIによる公園整備を行うには、前提として事業者側に整備を行う魅力や利点が必要であり、市はサウンディングの中で市民と企業のニーズを把握し、サポートすることが重要な要素と思われる。また、事業者においては公園管理において多様な市民ニーズに答える戦略的経営視点や地域貢献への理解が求められ、長期的に質の高い公園サービスを提供するためには、市民の参画も重要な要素であり、学識経験者・市民・事業者の検討会などの設置も検討が必要と考えられる。

大蓮公園の整備事業は、多様な主体が連携し協働で戦略的に整備、管理、運用が行われており、今後の唐津市の公園整備において大変参考となるモデルであった。

公園事務所での事業説明(大阪府堺市) マルシェ開催スペース

公園事務所での事業説明

マルシェ開催スペース

私設図書館(旧すえむら資料館) 民間企業による商品展示(旧すえむら資料館内)
私設図書館(旧すえむら資料館内) 民間企業による商品展示(旧すえむら資料館内)

視察項目2:公営住宅建て替え事業について(視察先:大阪府大東市)

概要

大東市は大阪市の東部に隣接し、緑地公園や山々に囲まれ、自然と共存したベッドタウンである。人口は唐津市と同規模で12万人弱、人口減少・高齢化・公共施設の更新など唐津市と同様の課題を抱えている。

大東市ではこれらの課題に対し、「自分でつくったまちに住む」を開発理念として公営住宅の建て替え事業が実施された。建て替えを行うにあたり財源がないことや、市の事業では同じような市営住宅ができてしまうことから、民間の資本・ノウハウ・マネジメント力・行政にできない発想を取り入れるため、全国で初めてPPPを用いて公営住宅整備に取り組まれた。

整備前の市営住宅は昭和40年代に建設され、約140戸、風呂なしで暗い雰囲気だった。建て替えにあたり空き戸数や転居人数などを把握し、140戸→70戸に戸数を減らし、民間会社がデザイナーを選定し、自然と調和をコンセプトに木造低層の2階および3階建て、玄関が敷地内の公園(中庭)に面したつくりで、地域コミュニティを生み出す空間設計を施されていた。

また、敷地内には商業棟が建設され、アパレル・雑貨・ベーカリー・レストランなどさまざまな民間テナントが入っている。商業棟については、テナントの要望を設計段階から取り入れるテナント先付け型で実施されていた。さらに、エリアの価値を高めるため、周辺道路の拡幅、橋梁の拡幅、川に降りる親水護岸整備なども実施されており、単なる市営住宅の建て替えではなく、まち全体のスケールで構想し整備されていた。

事業の流れとして、大東市が第3セクターのPPPエージェント会社を設立し、この会社が行政・資金・設計・住宅管理・テナント営業などの全体の調整役を担った。次に特定目的会社が設立され、設計・建設・賃貸住宅管理の実務を担っている。全体を通して、民間企業が主導で行った事業であった。

所感

現地視察を行い、一般的な市営住宅とは異なる低層のお洒落な木造住宅が建設されていた。玄関前の共有ベンチでは住民の方々が会話をされており、地域コミュニティが形成され、人にやさしい空間設計だと感じた。住民の方は以前の市営住宅から引き続き住んでいる人がほとんどであるため高齢者が多いようであったが、最近は若年層からの入居希望もあるとのことで、エリアの高齢化を改善する一歩になっているようだ。

また、商業施設棟は平日にもかかわらず多くの若者や子育て世代でにぎわっており、単なる市営住宅の建て替えでは生まれない地域活性化と高齢化エリアへの若年層の取り込みに成功していた。

大東市のPPPによる事業利点は、民間が自己資金で建物を建設し所有するため、市が資産を持つリスクが低減される点である。次に、市営住宅の土地は市所有のものであるため、土地借地料として市に安定的な収益を確保できる点も挙げられる。また、公営方式と比較して2年ほど工期も短縮されており、効率的に建て替えが可能となる。

大東市の事業の成功要因として、第3セクターのPPPエージェント会社の社長の手腕によるところが大きい。社長は元大東市の職員であり、PPPの事業調整やテナント誘致など多岐にわたり業務を推進された優秀な人材であった。

唐津市において同じ手法での建て替えを検討する場合、人口密度などを考慮すると商業棟の設けることは難しいが、民間資金で民間企業による市営住宅の建設および賃貸借運用を行うことは、さまざまなメリットがあるため検討の価値がある。課題としては民間事業者の理解を得られるか、また事業実施には事業を牽引できる優秀な人材が官民それぞれで必要であり、市職員の育成ならびに協働できる民間企業の探索なども併せて検討が必要である。

大東市役所での事業説明 建て替え後の市営住宅

大東市役所での事業説明

建て替え後の市営住宅

商業棟  
商業棟  

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