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更新日:2023年2月13日
こんにちは。唐津市水産業活性化支援センターの村山です。
唐津市では平成24年度から九州大学と共同研究で「新水産資源創出研究プロジェクト」に取り組んでいます。
このプロジェクトでは、水産業の活性化と地域の活性化を目指して、相賀の水産業活性化支援センターで、マサバなどの完全養殖技術の開発、ケンサキイカの先端的研究、バイオ水産技術の開発を実施しています。
今回は、今シーズンのマサバ種苗生産技術開発が始まりましたので、今シーズンの方針や完全養殖のメリットなどについて紹介します。またバイオ水産技術について、3月号の続きを紹介します。
平成24年度から技術開発を進めてきた完全養殖技術の開発は、平成26、27年度にはほぼ確立され、マサバの販売も徐々に拡大してきました。目的とする漁業の活性化や地域の活性化に向けて残された課題はいくつかありますが、なかでも大きな課題は生産の拡大(種苗の大量供給及び養殖してくれる方の確保)となりました。
このため今シーズンは、公益社団法人佐賀県玄海栽培漁業協会の協力を得て、量産技術の開発に取り組むこととしています。当センターの限られた施設では、これまでどおりの大きさの種苗(8cmから10cm)を生産できる上限に達していると考えれらますので、小さいサイズの稚魚をたくさん生産し、それを栽培漁業協会で大きくしてもらうようにします。
こうすることで当センターの施設でもたくさんの稚魚を生産でき、栽培漁業協会でこれまでどおりの大きさまで育成して供給できるようになります。
量産技術の開発は3年間をめどに実施しますが、技術が開発されたあかつきにはその技術を活用して、より多くの稚魚を供給できる体制の整備にも着手します。
また、実際に養殖をしていただく方にもこれまでの3人から6人に倍増する予定です。養殖をされる方全員でグループを結成して養殖方法や販売方法の基準となるマニュアルを作成し、飼育方法を統一して品質の向上及び均質化を目指します。
ところで完全養殖をするとどんなメリットがあるのでしょう、また通常の天然の幼魚を採捕して養殖するのとはどう違うのでしょうか。
今回はマサバの完全養殖のメリットについて紹介します。
マサバは脂がのってこそ美味しい魚です。ですからマサバの旬は脂がのっている秋から冬と言われ、旬を外れたマサバは食用としての価値はほとんどないに等しい扱いを受けます。
しかし完全養殖のマサバは年間を通してきちんと管理された餌を食べさせるので、脂ののりに変化がなく1年中美味しく食べることができます。
周知のようにサバは漁獲後の鮮度の劣化が早く、生食できるほど新鮮なサバはなかなか手に入りませんが、完全養殖のマサバは活魚での流通が可能なので刺身はもちろん活魚料理も提供できる究極の鮮度で輸送が可能です。
と、ここまでは完全養殖も天然幼魚を使った養殖も同じですが、次からは完全養殖ならではの特徴です。
天然のサバにはアニサキスという虫が入っていることがあり、刺身で食べたときにアニサキスが体に入ってしまうと腹痛を起こし、しばらく(通常は1日程度で治ります)激痛に苦しむことがあるため非常に恐れられています。
このアニサキスは天然の海の中で魚がオキアミなどを餌として食べた際に感染しますが、完全養殖のマサバは卵の時から人為的に管理され、きちんと管理された餌を与えて育てられるのでアニサキスに感染するリスクがほとんどなく、安心して生食できます。
実際に平成26年度から販売を始め、これまで1万尾近くを料理してもらっていますが、アニサキスは1回も見つかっていません。
以前は型の良いマサバがたくさん水揚げされていましたが、近年は漁獲量が減ったため水揚げされるマサバが減り、型も小さいものが多くなってしまいました。このため漁獲量を制限するなど、国をあげてマサバの資源を守る取り組みが行われています。
完全養殖では卵から育てたマサバを次の親魚として使用するため、天然の資源に全く影響を与えず養殖用の種苗を供給することが可能です。
マサバの脂には体にいいとされるDHAやEPAがたくさん含まれていると言われています。1年中脂がのって美味しい完全養殖マサバを食べると健康や美容にいいかもしれませんね。
これまでに、カタクチイワシは人間にとって非常になじみ深いだけでなく、食物連鎖という海の循環のなかで、とても重要な役割を担っていることを紹介しました。
また、カタクチイワシの特徴を生かした研究を行うことで、人間の生活と福祉に貢献できる可能性があることを述べました。
今回は、カタクチイワシが持っているすばやく成長し、たくさんの卵を産む、という特徴の他にも、様々な利点があることを箇条書きにしたいと思います。
1.すばやく成長すること
2.たくさんの卵を産むこと
3.飼育が簡単なこと
4.1年中卵を産み続け、卵を産む時間のコントロールが可能なこと
5.卵が透明で、成長の様子を簡単に観察できること
6.身体のサイズが適当であること
このように、カタクチイワシは研究を行う対象としても、とても魅力的な生き物です。
次回は上記1から6を詳しく説明することで、その魅力についても知っていただけたらと考えています。
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